杓子尾根と白馬岳周辺山スキ−
2009年5月1日〜3日

1日目 5月1日

残雪期の山スキ−は スキ−技術が未熟な私でも、案外滑り易いシ−ズンです。 
今年のゴ−ルデンウィ−クの3日間は、白馬岳周辺に行ってきました。
車一台を栂池スキ−場のゴンドラ乗り場
にデポし(エスケ−プル−トでの下山口)、
その後八方から猿倉へと向かいました。

入山の準備を整え、町営猿倉荘から
8時前に出発しました。

3箇所の駐車場には車が30台ほど。
シ−ル歩行のスキ−ヤ−や
ボ−ダ−が多いようでした。

最初は林道沿いをシ−ル歩行です。 
前方には白馬岳周辺の山々が望め、
3日目の最終日に滑降予定の金山沢
を眺めながら進みました。
7時50分 町営猿倉荘をスタ−ト   しばらくは林道沿いを進むル−トです
歩き始めて1時間ちょっと・・・。シ−ル歩行のスキ−ヤ−や、アイゼン・ピッケルの登山者達は・・・
白馬尻を目指すもの〜小日向山に向かうもの〜と、少しずつバラけながら、私達は杓子尾根へと取り付きました。

猿倉から入山する多くは白馬尻から大雪渓を登っていく人のようです。右下には大雪渓に入っていくスキ−ヤ−の姿が見えました。
 初日は白馬岳直下の白馬山荘まで入る予定です。白馬山荘まで入るには栂池スキ−場から入るか、
大雪渓をツメるかが一般的ですが、 大雪渓は入山4日前に降った雪が雪崩を誘発する危険性もあります。
9時20分 白馬尻へと向かうスキ−ヤ−と別れて杓子尾根に取り付きました    12時40分 ジグザグの急登
最初はなだらかな尾根をシ−ル歩行で直登していきました。杓子尾根の下部はスキ−滑降も充分楽しめそうな
広い斜面の尾根でしたが3ピッチ目あたりから尾根の傾斜が増し、斜面をジグザグに登っていきました。

だんだん傾斜が増してくると、足元のスキ−に神経を集中するようになります。
油断しているとスキ−が後滑りして態勢を崩してしまい、余分な労力を使うからです。 
ただ無心で黙々と前へ前へとスキ−を滑らせ、グリップを利かせて登ることだけに神経を集中させる・・・まるで禅の修業のようです。
14時10分 大きなシュルンド手前でスキ−を外し、アイゼン歩行に切り替える    14時30分 杓子上部を見上げる
「ふうぅ〜(@_@) 」 太陽は燦々とふりそそぎ、たっぷりと汗をかきました。
歩き始めて6時間、大きなシュルンドが出た地点で、スキ−はザックに付けて、アイゼン歩行に切り替えました。
4日前に降った雪で雪面は真っ白、トレ−スはないのでトップはラッセルしながら登っていきました。
左右が落ちている傾斜になったところで簡易ハ−ネスにロ−プを付けてスタカットで登っていきました。
14時30分 白馬岳と白馬山荘が見える        16時30分 ついに杓子岳山頂に到着 こんな所を登ってきました
右側は大雪渓側に落ち込んで、左側を見ると杓子沢側に落ち込んで・・・ 
そのピ−クに沿って登っていくのですが、
多分、高所恐怖症のような私は、こんな場所を登っているんだという事実が
恐ろしくて仕方ありませんでした。

横を見下ろすと足がすくみ、上を見上げると目が眩むので、だだ足元だけを見て進みました。

ピッケルが欲しいと思った所が2箇所あり、手を雪の中に埋め込んで冷や汗をかきつつ
登りました。
     
 (そんなわけで恐怖の2時間の写真はありません) 

ラッセルで思ったより時間がかかったので途中携帯で宿に連絡をとり
、到着が夕方6時頃になる旨を伝えました。
ついに杓子岳のピ−クです
16時30分  畳3畳分ほどの広さの杓子岳(標高2812m)の一角にたどり着き、ほっとして白馬岳を眺める
やっとわずかな平らのある杓子岳の一角にたどり着きました。白馬岳と白馬山荘が同じ目の高さに見えました。
遠くには槍ヶ岳方面も見渡せました。
頂上直下を慎重に降りると一般登山道に出ました。岩クズと残雪の斜面を最低鞍部まで下り、白馬山荘を目指します。

この稜線の道も案外長く、アップダウンもあります。時間は夕方5時を過ぎ、日はまだ高く、何とか先が見えた感じだけど、
すでに歩き始めて9時間を経過し、スキ−を付けたザックが肩にずっしりくる重さです。

白馬山荘に到着時間を18時と伝えてあったので、丸山を越える手前で、隊長は一足先に山荘へと急ぎました。
私たちはさらにペ−スダウンして丸山を越え、西の空の夕焼けを見ながら町営頂上宿舎を見送って、いよいよ最後の登りです。
白馬山荘はすでにランプが灯り、最後はランプの灯りに導かれて山荘に到着しました。

宿には20名ほどの宿泊者があり、夕食の時間をすっかり過ぎてしまったけど、宿のご配慮と好意により、
遅い時間にもかかわらず、夕食の準備をしてくれるとのことでした。 

部屋に落ち着き、着替えをすませから食堂に向かいました。缶ビ−ル一本で気持ち良くなって、とんかつや蕎麦、
野菜サラダ・具沢山の味噌汁を美味しくいただきました。
遅い時間にもかかわらず、従業員の対応はとても良く、あたたかなご馳走をいただけたことに感謝して、布団に入りました。

2日目  5月2日

翌朝、明るくなってから目が覚めると、窓の外に真っ白に輝く剱岳が見えました。今日も快晴、絶好の山スキ−日和です。
昨日、『久しぶりに充実した山登りができたヨ。』 と二人は杓子尾根を登った余韻に浸りつつ・・・。
私は何とか無事に山荘にたどり着けたことがうれしかった。

宿の朝食は豪華で(山小屋ですが・・・) シャケやオムレツ、生野菜と生ハムまで大皿に盛られていました。
蕗味噌や大きな梅干まであってめずらしくご飯をお代わりしてしまったほど・・・。
7時10分  白馬山荘から立山〜剱岳を眺める
計画では雪倉岳から蓮華温泉に滑り込みたかったのですが、瀬戸川のスノ−ブリッチが崩壊し、渡渉できないとのことで、
乗鞍岳から蓮華温泉に入ることになりました。
    (雪が少ないことは地球温暖化の影響なんでしょうね)
7時30分 旭岳(標高2867m)に登り スキ−滑降を楽しむ           白馬山荘に戻り白馬岳山頂を目指す
縦走コ−スに向かう前に、目の前の旭岳に登って山頂からスキ−滑降を楽しみました。
登り35分、滑り10分、再び山荘まで登り返し、約1時間ちょっとの足慣らしでした。
9時50分 白馬岳山頂(標高2932m)       白馬岳から昨日登った 杓子岳と杓子尾根を眺める
さて、白馬山荘から15分ほど登ると白馬岳山頂に着きました。なんと、このメジャ−な山頂は私達3名の貸切状態でした。
強力伝の巨大な石の案内板も健在です。山頂からは昨日登った杓子尾根の全容が見渡せました。

右上の矢印が杓子岳山頂↓
白馬岳山頂から見た杓子尾根  (矢印で示した尾根の頂点を登ってきました)
(こちらはおまけです)  白馬岳主稜を登っているクライマ−
白馬岳直下を恐る恐る覗き込むと、白馬岳主稜を登っている人たちが点々と見えました。
そうこうしていたら傾斜70度もある雪壁を乗り越え、一人のクライマ−がひょっこり山頂に現れました。
さて、縦走は始まったばかり、

『雪倉岳も雪が少ないな〜』と話ながら、
スキーで滑れそうな所はスキ−を履き、
登りになるとスキ−を担ぎ、

小蓮華山方面へと向かいました。
稜線は風もなく、良く晴れて遠くの
山々まで見渡せます。

こんな視界のいい時ですが、この稜線上
では雷鳥の姿を多く見ることができました。
親鳥が子供を連れています。
冬羽から夏羽に変わりつつある
斑模様がキレイでした。

大雪原を滑るように飛び回って、
あちらこちらに移動しているらしく、
耳を澄ますと『ガ−ガ−』と、容姿に似合
わない鳴き声が聞こえていました。
13時 舟越の頭(金山沢下降点)から白馬大池方面に滑りこむ ピ−クが舟越の頭 斜面左側に3名のシュプ−ルを描く
小蓮華山からスキ−を履いてトラバ−ス気味にスイスイ走り、再び登り返して舟越の頭(金山沢下降点)に立つと、
多くのスキ−ヤ−が滑降の準備をしていました。

ここからはスキ−を履いて白馬大池
(池は雪の中)まで滑りました。ここはとてもいい斜面で、キレイなタ−ンが決まりました!
13時40分 白馬大池から乗鞍岳(2436m)に登る     14時 乗鞍東面から振子沢方面にむかって滑降スタ−ト
白馬大池からはスキ−を担ぎ、岩と雪のミックスの中を乗鞍岳に登り返すと、これで今日の登りは終わり・・
乗鞍岳のだだっ広い頂上の東面まで進み、傾斜の緩い広い斜面にむかって滑り降りていきました。
途中でGPSで位置を確認しながら、左〜左へとトラバ−スしながら滑っていって振子沢に入っていきました。
14時20分 雪倉岳〜朝日岳の山々を正面に見ながら最初は広い斜面を滑る       15時 蓮華温泉にゴ−ルイン 
振子沢には赤テ−プが所々にあって、スキ−のトレ−スもたくさんありました。
だんだん沢筋が狭まって、スノ−ブリッチが崩壊している箇所もあり、側面をトラバ−スしたり、
ちょっと登り返したりしながら進むので、このあたりまで下りてしまうとあまり楽しくありません。

やがて車道が出てきて、雪が終わった橋の手前でスキ−はおしまいです。後は林道を10分ほど歩き、蓮華温泉に到着しました。
最上部にある薬師湯      宿の夕食 行者にんにくの天ぷらや野菜のかき揚げ、ボリュ−ムたっぷりのハムチ-ズかつ
今日もたっぷり7時間、大部分は下りでしたが、よく動きました。使う筋肉も違うので、腕や足が疲れました。
部屋に落ち着き、5時30分の夕食の時間まで、たっぷり時間があるので、露天風呂に向かいました。

今年は雪が少ないからか今日の宿泊者は30名ほど、例年よりも少ないそうです。
夕食はボリュ−ム満点のメニュ−でとれもおいしかったです。

3日目 5月3日

昨夜はたっぷり温泉に浸かり、たっぷり飲んで食べて・・・たっぷり寝て・・・・・最終日の朝を迎えました。
高曇りながら山々は見渡せます。
二日間の疲れも出始め、全身が筋肉痛です。皆が無口になってしまうのは疲れのせいばかりではありません。

 『一般的には最終日は下山・・・』ですが、ここは一般車両がまだ入って来られない場所で、
なおかつ一番お手軽なル−トである木地屋に下山するための従来のスキ−ツァ−コ−スが融雪が進んで使えないとのことです。
林道を歩いて帰るのではなく、、金山沢をスキ−で滑って猿倉に戻るという計画で、最終日がスタ−トしました。
7時45分、出発  宿のそばの雪解けした道ばたや山肌には水芭蕉の群落がありました
金山沢に行くには、昨日登った舟越の頭(金山沢下降点)まで、登り返さなければなりません。
標高差でなんと1100mもの登りです。  無口の原因はこの辛い登りのせいでした。
8時 まずは正面上部の天狗の庭を目指します      11時 やっと傾斜が緩み、雪倉岳が大きく見えました
露天風呂から眺めた尾根に取り付く為に、再び急傾斜をシ−ル歩行でジグザグで登っていきました。
せっかく朝風呂に入ったのにあっという間に汗をかき、おまけに温泉の硫黄臭がカラダからプンプンしてきます。
3ピッチ、辛い登りを終え、やっと傾斜が緩みました。展望も開け雪倉岳や朝日岳が同じ目の高さに見えてきました。
ここからはややトラバ−ス気味に進み、広く平らになった台地になると白馬大池山荘の屋根が見えてきました。
13時10分 舟越の頭(金山沢下降点)まであと30分の登りです    14時20分 舟越の頭にて、金山沢で雪崩が発生
登りもあと40分の辛抱です。14時、やっと昨日立ったピ−クである舟越の頭(金山沢下降点)まで登り詰めました。
ここからはスキ−で下るのみです。 コ−ヒ−など沸かしながらゆっくり休憩をとりました。 

猿倉方面に滑り降りる金山沢の出だしは急峻ですが、扇状に広く、下部は狭まっているものの
快適な傾斜の斜面が広がっていました。
シ−ルを外し、スキ−滑降の準備をしていると・・・「あれれ・・・!!?」 ズズズ−・・・・と斜面が動いています。
 6日前に降った雪によるものでしょうか。幅100m程の規模で表層雪崩が発生していました。
雪崩の近くにはスキ−ヤ−の姿もありましたが、何なく回避して滑り降りていきました。

この時点で金山沢に降りることは中止し、栂池自然園に滑り降りることになりました。
15時 金山沢下降点から東に10mほど下がった所から栂池方面に滑り込む   進行方向に栂池自然園見ながらの滑降
金山沢下降点から東に10mほど下がった所から斜滑降で滑り出し、栂池方面に滑り込む尾根状のル−トを滑り始めました。
午後の重たい雪でしたが、急斜面をやり過し、後は自然園に続く緩い斜面を思い思いに滑り降りていきました。
先ほどいたピ−クはあっという間に遥か上に見上げ、あっという間に下って、栂池自然園の平らな雪原に入ってきました。
後はもう一度スキ−にシ−ルを付けて、ロ−プ−ウェイの駅まで登っていきました。
15時10分 栂池自然園の雪原に入っていく                 15時40分 栂池ビジタ−センタ−
栂池ビジタ−センタ−のあたりを歩いていると、ロ−プ−ウェイが滑り降りていきました。
駅に着くと、なんと16時が最終のロ−プ−ウェイだとのこと。間に合ってよかった (*^。^*) 。
ロ−プ−ウェイを降り、ゴンドラ《イブ》に乗り換える場所に行くと、
そこは今シ−ズン最後の滑りを楽しむ若者ボ−ダ−達で大いに賑わっていました。

今回の3日間はよく登りました。3日間の登行標高差が3200m、滑降下降標高差が2540m。
他所ではあまり実現できない数字となりました。


登行・滑降ル−トはこちらです ↓
参考資料 (C)Yahoo Japan
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